【ご質問】借金の相続は放棄できると聞きましたがどうすれば?
Q.約一か月ほど前に父が他界しました。その時には私も、兄弟も全く知りませんでしたが、亡くなってから半月ほど経過したころに結構な金額の借金があることが分かり、その支払いなどについて問題が発生しつつあります。聞くと相続放棄というものがあり、借金の相続を放棄できると聞きましたが、その方法や仕組みについてお詳しい方教えていただけませんでしょうか?
A.文面を拝見する範囲では「借金の相続を放棄」との認識をお持ちのように感じますが、相続放棄は借金だけに限らず全ての相続を放棄することになります。まず必要なのは、財産も借り入れも全てのものを総合してどちらが大きいのかをしっかりと把握することが必要になります。
仮に遺産がマイナスであっても、プラスであっても、相続を放棄することを望んでいるのであれば、手続き上は亡くなった方がお住まいだった地域を管轄している家庭裁判所に届け出るということになりますが、最も手っ取り早いのは弁護士など法律の専門家に相談するのが良いと思われます。
注意しなければならないのは相続を放棄してしまった場合には後からそれを翻意することはできないということです。今回、借り入れが発覚したのが半月後ということですが、もし相続を放棄してしまえばこの後大きな財産があるということが発覚したとしても「やっぱり相続する」ということはできません。
また、マイナスが大きいからと相続を放棄するのであれば、あらかじめ相続の次の順位の人などの親族としっかりと相談した上で相続を放棄する必要があります。もちろん、後の相続人も相続放棄してしまえば良いのでしょうが、借金の取り立ては相続を放棄されれば次の相続人に請求すると言うのが通常です。自分だけが相続放棄したとしても、その借金が消えてなくなるわけではないことは注意しておく必要があるでしょう。
更に、相続放棄の手続きは相続が発生してから三カ月以内に申請する必要があります。それまでに必要な書類を作成したり、準備したりする必要があることを考えるのであれば、自分で手続きを行うよりも行政書士などに依頼をしたほうがより問題を抱えることなく円滑に手続きができると言うことは間違いないでしょう。
相続放棄では相続の権利そのものがなくなります。遺産の分割協議などで受け取り範囲や支払い範囲を決めていた場合には、後から財産が見つかったりしたときに再度協議を行うことができます。しかし、相続放棄の場合にはこの協議に参加することすらできなくなります。
また、翻意できないということを考えると、故人が亡くなった悲しみもまだ残っている三ヶ月間と言う短い期間の中で、可能な限り財産について調べる必要も出てくるでしょう。よほど大きなマイナスがあると言うのであれば相続人が一致団結して急ぎ手続きを行うこともできますが、マイナスかプラスか良く分からない状況などであった場合には手続きそのものが感情的な側面から遅れてしまうということも発生します。